矯正治療中に水が歯にしみた経験はありませんか?矯正をしたことにより、歯がしみるようになる方は少なくありません。矯正治療は歯を動かしていく治療なので、さまざまな副作用が生じる場合があります。今回は、その中でも「歯がしみる」ことについてご紹介します。
目次
- 歯がしみる原理
- 矯正で歯がしみるようになる理由
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歯がしみる場合の対策
- 3-1. 知覚過敏用の歯磨き粉
- 3-2. 薬の塗布
- 3-3. プラスチック材でカバーする
- 水がしみるのは何かのサインかも?
1. 歯がしみる原理
歯がしみる症状を「知覚過敏」といいます。口を開けたときに見える歯の白い部分は「エナメル質」という硬い組織で守られています。普段生活しているときは、歯はエナメル質で覆われているため刺激を受けてもしみることはありません。
しかし、歯茎に覆われている根っこの部分は強いエナメル質で覆われておらず、柔らかい「象牙質」という組織でできています。象牙質には歯の神経につながる無数の穴があいているため、象牙質の穴を通して受けた刺激が神経に伝わり痛みを感じてしまいます。歯茎に覆われていれば刺激を受けることはなく、痛みを感じることはありませんが、何かが原因で象牙質が露出してしまうと刺激が直接神経に伝わるため、“しみる”という症状を感じやすくなってしまいます。
2. 矯正で歯がしみるようになる理由
歯がしみてしまうのは、象牙質の露出により刺激が直接伝わることで起こります。矯正治療中は歯を少しずつ動かしていくので歯茎と根っこに隙間が生じ、その隙間から象牙質に刺激が伝わることで知覚過敏が引き起こされやすくなります。また、矯正治療中に歯磨きを念入りに行った結果、強い歯ブラシの力が日常的に加わることにより歯茎が退縮し、象牙質が露出してしまうこともあります。矯正治療をしている方には誰にでも知覚過敏は起こり得るので、過度に不安になる必要はありません。ただし、日常生活に支障をきたすほどになると何らかの対策が必要になります。
3. 歯がしみる場合の対策
日常生活において、歯磨きの時に毎回水がしみたり、知覚過敏の症状が強く出ている場合は次の対策を実践してみると良いでしょう。
3-1. 知覚過敏用の歯磨き粉
テレビCMなどで、歯がしみる時に使うのをおすすめしている歯磨き粉を一度は目にしたことがあると思います。知覚過敏用の歯磨き粉の使用によって、知覚過敏の症状を和らげることができますので、まず最初に取り入れてみましょう。
歯磨き粉の使用で知覚過敏が和らぐ原理は、歯磨き粉に配合されている硝酸カリウムという薬用成分が露出してしまった象牙質をカバーし、象牙質の穴へ刺激が伝わらないようにします。ただし、一度だけの使用ではなく、継続して歯磨き粉の使用を続けることで歯がしみる症状を和げることが期待できます。使用をやめれば、再び歯がしみてしまう可能性があるので、使用を継続しなければいけないという点に注意が必要です。知覚過敏の症状が軽度であれば、このように自宅ですぐに実践できるような歯磨き粉の使用だけで症状が改善される場合もあります。しかし、1~2週間ほど知覚過敏用の歯磨き粉を使用しても効果がなかった場合は知覚過敏ではなく虫歯の可能性もあるので1日も早く歯医者を受診することをおすすめします。
3-2. 薬の塗布
歯磨きの使用を継続しても症状の改善が見られない場合、歯医者で、まず最初に実施されることが多い治療法が“薬の塗布”です。知覚過敏は象牙質が露出し、象牙質に直接刺激が伝わることで歯がしみるので、露出した象牙質を薬で覆うことによって刺激を遮断し、歯がしみる症状を抑える効果が期待できます。ただし、薬の塗布の場合も1回だけでなく数回塗布しなければ効果を得られないこともあり、少し面倒ですが何回か通院が必要になります。
3-3. プラスチック材でカバーする
薬の塗布でも症状の改善が見られない場合は、コンポジットレジンと呼ばれる虫歯の治療などに使用されるプラスチックの材料で、直接しみる部分を覆う治療もあります。歯周病などで根っこが大きく露出してしまった方や、強い歯磨き圧で歯肉退縮が進み薬の塗布では知覚過敏をカバーしきれない方によく行われる治療法ですが、デメリットもいくつかあります。コンポジットレジンはプラスチック材なので着色しやすく、段々とプラスチックの部分が変色していく可能性があります。また、しみる部分は歯と歯茎の境目になるのでその部分に塗布したプラスチック材によって歯ブラシが当たりにくくなり、歯周病を誘発してしまう可能性もあります。この治療法は、歯磨き粉の使用や薬の塗布をしても改善が見られない場合のみ、デメリットを踏まえた上で判断できると良いでしょう。
4. 水がしみるのは何かのサインかも?
矯正治療中に水がしみるのは、知覚過敏、あるいは虫歯の可能性があります。知覚過敏の場合は歯磨き粉の使用や薬の塗布で症状が改善することがありますが、虫歯で歯がしみている場合は虫歯がかなり進行してしまっている状態です。
知覚過敏は一過性の痛みなので時間が経つと症状が落ち着きますが、虫歯の場合は痛みが強く水などの刺激が無くても日常生活で痛みが続く特徴があります。何かしみるな?と不安に思ったら歯医者に確認してもらうのが一番です。しみるのを放置してしまうと最悪の場合、神経を抜く事になってしまう場合もありますので自己判断で放置しないよう注意しましょう。